会っていないと
その後、入社一年目の僕は仕事に忙殺されていった。
2年目に香川県に転勤になった。
その前にまた、みんなで集まった。
転勤のことは黙って。
ふみちゃんは産後半年位たっていて、久々だから羽伸ばしておいでって言われてると2次会まで参加した。
幸せそうだった。
といっても、そもそも最初の店には殆ど参加をしてなかった。
カラオケして終電まで一緒にいた。
送るというのに大丈夫と言い切る彼女を無理やり改札までおくる。皆に送りオオカミになるなよと、言われながら。
ならねーよ。
幸せそうな彼女を、そんな目にあわせてどうするの?
僕だって嫁さんいるし。
改札で、握手して別れた。
その後、僕は香川県に引っ越した。
収入はそこそこあったし、物価が安くて賃貸の広い家を借り、仕事に邁進していた。
会えないとなると、ふみちゃんのことも薄れていっていた。
3年目、上司がかわってから僕の環境は一変した。
改革が嫌い、上司に取り入るのがうまい、
僕のような歯向かってくる(といっても、相手が間違えてるからだが)部下を潰そうとする。
最初は歯向かったりすかしたり、なんとかやっていたけど、しんどくなってきた。
病院で軽い鬱だと言われた。
嫁さんは一般的にはいい人なんだが、今も作家をしていて、ちょっと変わってる人。
この状況を話したところ、
「それは井原が悪いんだよ。気の持ちようでしょ」(嫁さんは未だに僕の名字を呼び捨てにする。)
「私は働くの嫌なの。しっかりお給料稼いできて」
この頃から、僕らは完全なるレス状態だった。
つきあって数回したこともあったけど、結婚後したかどうかも覚えてない。
健全なる20代男子だけど、僕にとってはそんなに重要ではなかった。
そりゃぁしたくないかと言われれば、したい。
只、できないから別れるとかそういう選択はなかった。
でも、香川県に引っ越すときベッドを分けたいといわれ、こう言われた。
「そういうこと(セックス)、もうしたくないから。外でしてきていいよ」
ショックだった。
心も離れてるように感じた。
子供は…貧乏学生どうしだから暫く作らないでおこうとは話し合っていた。
しないってことは、子供要らないって事だよね。
でも、そういうこと、一方的に言うものなのか?
妻と夫の立場が逆なら、妻はかわいそうと慰めてもらえるんだろうか。
そんなときhotmailのメッセンジャー機能で懐かしい名前の登録があった。
"かわっち"
ふみちゃんだった。
アイコンにかわいい赤ちゃん。
ダメモトでメッセージを送ってみる。
「久しぶり!元気にしてる?」
暫くして返信が来た。
『お久しぶりです。元気にやってますよ』
彼女の声が聞きたくなった。
「電話出来るときとか、ある?」