電話
『もちろん、大丈夫です(^-^)子供が寝てるタイミングになっちゃいますけど。何かありました?』
「何もないと、電話しちゃダメ?僕はかわっちのことずっと好きやのに」
言ってしまった。
『あはは ありがとうございます。私も井原さんのこと大好きですよ。』
見事にスルーされた。
けど、ホッとしてる自分もいた。
数日後、研修の出張先からふみちゃんに電話してみる。
変わらない優しい声に癒される。
ふみちゃんのことを聞いても答えるのもそこそこに、自分が話すのは苦手だから話を聞かせてと言われ、暫く話した。
また、お茶でも使用ねと言って電話を切った。
それから時々、メッセンジャーで繋がれたときだけ会話した。
家が忙しくてパートを辞めなくてはいけないとかいっていたと思う。
僕は、何となく大変だなと思っていた位だった。
でも、このときからのフミちゃんの家は凄く大変な事になっていた。
義理のおばあちゃんが亡くなり、介護していた義母さんが亡くなり、家事を一手に担いながら育児とパート。
暫くして同居の義父さんが脳梗塞で倒れ、寝たきりになったのだった。
僕が彼女の近所に出張で赴く事になりメールした事があった。
「今、⚪⚪にいるんだけど、お茶でもしない?」
今ならわかる。こんな状況で今から出てきてって言われて、電車で一駅のところだって行けないって。
浅はかな僕。
その時も「ごめんなさい。都合が悪くて…」
と、辛いだろう自分の状況は話さなかった。
それでも追い討ちをかけるように彼女を不幸が襲う。
フミちゃんの旦那さんが、ガンになった。