閑話⑬
『ひろくんがね、私を救ってくれたの』
いつだったか、言われたことがある。
育児と義父の看護、ご主人の看護。
先の見えない苦しさと、自分の置かれてる状況から逃げたくても逃げられない、壊れるんじゃないかと思ったそうだ。
『自分の好きなようにしていいって、思えるようになったの。もう十分頑張ったーって。』
『ひろくんは、もう充分よくしてくれたでしょ? 返す日が来るかもしれない。もし今の関係がダメになっても、友達でいてくれる?』
「そんなこと言わないで。ふみちゃんはずっと僕の心の恋人だったんだよ?やっと僕は恋人になれたのに。」
『えー?心の恋人、いっぱいいるんじゃないの?ひろくん、言い方が軽いんだもん(笑)』
『私、自分が傷付きたく無いだけなの。恋人っていうと、別れたら辛いでしょ?きっと。もうそんな思いしたくない。』
そんなふうに言うのは、本心じゃないと思う
自惚れじゃなくて。
人のために生きすぎて来た、ふみちゃん。
僕がその生き方を少しでも柔らかくほぐしてあげたかったけど
僕といる限り、難しいのかもしれない
彼女が僕の事を好きでいてくれる限り。
ふみちゃんなら、きっと素敵なやつが現れるだろう
その時、僕は、どんなふうになるのか
それまでふみちゃんは僕の者でいて。