決まる
年が明けて。
何とか就職も決まった僕は、それまでに遊ぶべくバイトもそこそこになっていった。
掛け持ちもしていたので、CDショップの方を早めに辞めようと考えていた。
二人だけの昼休憩の時、田中さんに伝える。すると、思いがけない事を打ち明けられた。
『私、6月で退社することにしたんです』
もう、くそ店長にも相談すみだという。
僕は少しショックだった。
でも、待てよ?今2月だぞ?
いくら真面目だからって引き継ぎ期間長くない?
『実は、二人目を妊娠して…』
彼女が言うにはこういうことだった。
・年末に妊娠がわかったけど、同時期に自宅に義祖母が引き取られ、義母による介護が始まった。
・義母さんがお子さんの面倒をみるのが大変になってきている。(保育園にいれているけど、田中さんの遅番の時などお迎え等すべて)
それなのに二人目は面倒みられない。
同居してるが故に、二人目出産と同時に仕事を辞めざるを得なくなったのだった。
産休ギリギリまで働くとなると6月までということになる。
彼女らしいと思った。
ということは、ここへ来てももう田中さんに会えないということだ。
この時、初めて僕たちは電話番号とメールアドレスを交換した。
「出産前にみんなで飲みに行こう」(今、考えても飲みの席に妊婦誘うなんて思考はアホかも)
「しんどかったらいつでも愚痴を聞くよ」(僕が聞いてほしかっただけ。実際、会社の研修がキツくて電話したのは僕。)
そう言ったけど、そんな案件で電話がなったことは一度も無いように記憶している。