年末
その年は結構な就職難で、僕もこれに関しては例に漏れずきつい思いをしていた。
バイトも入れる日が少なくなってきていたけど、田中さんの出勤日は変わらないので、僕が出勤するとほぼ田中さんいた。
久々に会うと必ず聞いてくれる。
『元気にしてます?論文大丈夫ですか?』
全然問題なかったけど、慰めてほしくて
「就職活動きついっすわ~。就職浪人なったらどうしよ」とか言っていた。
と、聞いてもないのにお姉さま方が話し出す。
矢野さんは『就職浪人カッコ悪~。がんばりよ~』と、ガハハと笑い飛ばす。
もう1人の社員さん辻村さん(女性)は
『井原くん、奥さんおるねんから弱音吐いたらだめ!』と、なぜか怒り気味。
肝心の田中さんは、心配そうに微笑んでうんうんと相槌を打っている。
そのあと、倉庫で在庫整理をしていると田中さんがやって来た。
『さっきは変な風に振ってしまって、ごめんなさい。嫌な思いされませんでした?』
そう。彼女はほんとに気にしいだった。この頃は自分がした事に対してもされた事に対しても。
謝られた事が何に対してなのか、暫く解らなくて、僕がフリーズすることもしばしばだった。