未遂
いい香りがする。
髪も、首筋も。
ふみちゃんは強ばっていて抱きしめ返してはくれない。
背中や髪を撫で、首筋に唇を這わせる。
僕の息使いが早くなり、ふみちゃんに聞こえないか恥ずかしいくらいだ。
僕も久し振りのその行為にかなり興奮していた。
『…メ』
一旦 、体を離して彼女の顔を見る。
『ダメです』
首をふる。
無理だろ。
僕は、切れた。
彼女の唇を僕のそれで塞ぐ。
舌を侵入させ、味わう。
答えてくれないけど、執拗に。
首筋や胸元も。いい香りがする。
上着を脱がせたらノースリーブだった。
服の上から、触る。
抵抗されるから、キスする。
本気でいったら力では絶対彼女には分がないから優しく攻める。
本気で抵抗されるから、もう一度ぎゅっと抱きしめる。
「抱きてーーー!」
叫んでいた。
彼女はゆっくり抱きしめ返してくれた。
『私、胸ちっちゃいから恥ずかしいです』
そこ? 天然なのか計算なのか。
『井原さん、奥さんと仲いいんでしょ?』
こんな時でも僕の事考えてくれてる。
ぼくはレスの話、奥さんにこう言われてることをはなした。
信じてくれたかどうかはわからないけど。
『ありがとう。でも、ごめんなさい』
こうして、僕の決心は未遂に終わった。