ダブルワーク
三月。
僕は転職といっても、前職の会社から声をかけていただき、引き抜かれた形だった。
営業だし、外資系のノルマはきつかったけど
ふみちゃんの事を思うと頑張れる自分がいた。
でもやっぱり、離れていて会う日が決まってないと連絡をとらなくなる。
それでも何も言ってこないふみちゃんを、放置していた。
ふみちゃんは僕とやりとりするためだけのTwitterアカウントで、現状や気持ちを呟いていた。
それにリプライすることなく、いいねをするくらいだ。
上旬にお子さんの受験にかんしてはうまく言ったよと、直接連絡が来た。
でも、いつ会える?とはいってこない。
好きなのは、僕ばっかりだな。
そう思っていた。
4月1日。朝早くTwitterに呟きが投稿された。
『中洲で働くことになりました。時々よってね』
中洲は僕らの地元の歓楽街。ふみちゃんが住んでいる県内にある。
さすがにビックリしてLINEする。
「本気か?お酒飲めないと無理と思うけど?」
すぐ、既読になる。
『今日何日?』
あっ?!
エイプリルフール………
「騙されたーーー」
『ふふ。やったー』
何でこんなウソなんだ?と思ったが
まったく、嘘でもなんでもなかった。
クラブとかラウンジとか、一言も書いてない。
ふみちゃんは、中洲で、お土産として使われるケーキ屋さんで夕方ー夜中の仕事をきめてきていた。
週に2~3日そこで働いて、昼は病院で清掃の仕事。
そして、看護と介護と育児、家事。
「なんでそこなん?」
『井原さんに初めて中洲に連れてきてもらって、興味が湧いたの。夕方~夜の仕事も探してたし。やっぱり、接客が好きだし。
若いうちに出来たらよかったなぁ
うまくいったら井原さんにあえるかもしれないしね?』
僕は、なにも言えなかった。
ふみちゃんは僕の事、好きだよね。
僕は、ちゃんと伝えてない。
ふみちゃんを好きだって。