僕とふみちゃん

18年前に出会った僕たちは、再会しました。

初対面

その日も変わらずに過ぎていこうとしていた。


そんなとき、カウンターに向かってペコッと頭を下げつつやって来たお客さんとマネージャーが、親しげに話し出した。若くてぽっちゃりしてて黒くて長い髪が印象的、決して美人ではないけど優しい雰囲気のふんわりかわいらしい感じ。


僕は人を見た目で判断する方ではないと思っていたけど、良い意味で何かが引っ掛かった。


その人は、カウンターにいたもう1人の社員(矢野さん)さんと話している。手にはCD。常連客にしては僕が顔を知らない…。そうこうする間に、その人は僕の方をみて何か言いたげ(だったように見えた)だったけど、ちょっと顔をひきつらせて(ように見えた)ペコッとお辞儀をして、帰っていった。


僕は矢野さんに聞いてみた。

「常連の方ですか?僕、はじめてな気がするんですけど」

『あー、今の、田中さんよ。明日から復帰する』

「えー?紹介してくださいよ!田中さんも挨拶くらいしてくれたらいいのに」

『井原は接客中だったからじゃん?まあ、明日会えるしねー。それに、怖がってたよ(笑)』

「は?」

俺は身長が190㎝、黒ぶち眼鏡でちょっと強面。走ってきてぶつかった子供に「大丈夫かぁ?」と極上スマイルを向けたら泣かれるってこともあったくらいだ。


田中さんは矢野さんよりちょっと低く見えたから女子の平均?位か。


それにしても失礼だな。


それがふみちゃんの第一印象だった。

前日

明日から田中さんが出勤してくる。僕はありがたい事に、元の店舗に戻される事はなく、ここに残る事を要望されていた。



田中さんのお子さんがまだ小さくて、時短勤務になるからだった。担当も僕の棚になったから、社員の田中さんにバイトの僕が教える事になった。



「めんどくさっ」それが正直な気持ち。


でも卒業まで後一年、音楽好きで、スタッフ価格でCDが買えるし、いち早く情報がわかるこの仕事が好きだった僕は、心のなかでは渋々だったけど、表面上では笑顔でそれを引き受けた。

出会い

僕(井原 ひろみ)が彼女(田中 ふみ)と出会ったのは18年前、バイト先のCDショップだった。



当時では珍しく産休中の正社員。ふみちゃんの代わりに別店舗から配属されてきた僕は、当時学生結婚したばかりだった。



僕(25歳)より若いこと、入社2年目で産休に入ってること位しかわからない、特に興味もわかない。



院生の僕は結婚したばかりで浮かれていたし、勉強にバイトに忙しい、日々はあっという間に過ぎていき、産休が明け、ふみちゃんが出勤してくる日がやって来た。