僕とふみちゃん

18年前に出会った僕たちは、再会しました。

お茶

少し、遡る。


僕がふみちゃんと二人でお茶をしたのは

下の子が確か年長さんと言ってたと思う。


初めてあってから7年くらいたっていることになるのか

最後に会ってから5年ほどたっていた。


その頃、転職して東京にいた僕は、度々地元に出張で来ていた。でも、ふみちゃんのことは正直薄れていっていた。


ある出張の日、何となくメールしてみる。

「今日の夕方、時間あるんだけどお茶でもしない?」


すぐに返事が来た。

『是非行きたいです‼どこにいけばいいですか?』



僕の心臓がどくんっと脈打った。




今日はタイミングが良かったのか。


「⚪⚪のスタバでいい?」


『わかりました。場所わからなかったらメールしますね。』



約束の時間近く、パソコンで仕事しつつスタンバイ。

久々の再会に胸がおどる。


あ、今コーヒー買ってる、あれ?


僕は見つめてるけど、キョロキョロしながら僕の前を通りすぎる。

人違いかな…?

いや、あってる。


安定の、天然。


「ふみちゃん!」


今まで、心のなかでよんでいた名前が口をついてでた。


ふみちゃんは、びっくりした様子で振り返り、手を小さく振って引返してきた。


『立ってたら、絶対見逃さないのに』


ふみちゃんだから許せるセリフ(笑)


『髭と長髪。ますます怖いですよ(笑)』


「ひさびさの再会でそれ?酷いな」


『ごめんなさい。あと、すみません、こんな格好で』


ワンピース(チュニックというんだったらしい。後日知った)の裾を持ち上げうつむいて謝る。

「凄く、かわいいけど」


『もう30過ぎですよ。かわいくは無いでしょ?』



ふみちゃんは今もだけど、自分を卑下する癖がある。

遠慮して生きてきたんだろう事が伺える。




5年前に時間が戻される。


少し、スリムになった彼女の変わらない笑顔がそこにあった。



5年の時間を埋めるように、はなしが弾む。

やっぱり聞き役の彼女をだけど、仕事を始めたと嬉しそうに話してくれた。


このとき、まだ僕はふみちゃんがどれだけ大変な状況か知らなかった。きれいになった彼女が眩しくて、よからぬ妄想をしてしまった。このまま別の場所に行きたい。


僕の妄想は妄想で終わり、気づけば2時間近くスタバにいた。



またねとてを振って別れる。タクシーを探しつつふみちゃんが歩いていくのを見送る。


地下鉄の入り口に入るまで何度も後ろを振り返る。一度、僕を見失ったのかキョロキョロしてる。

地かに降りる前に全身で振り返り僕を探す。

見つけた!顔の横で手を振る。


それからふみちゃんと僕が再会したのは、8年後だった。

電話

『もちろん、大丈夫です(^-^)子供が寝てるタイミングになっちゃいますけど。何かありました?』



「何もないと、電話しちゃダメ?僕はかわっちのことずっと好きやのに」



言ってしまった。


『あはは ありがとうございます。私も井原さんのこと大好きですよ。』



見事にスルーされた。


けど、ホッとしてる自分もいた。





数日後、研修の出張先からふみちゃんに電話してみる。

変わらない優しい声に癒される。

ふみちゃんのことを聞いても答えるのもそこそこに、自分が話すのは苦手だから話を聞かせてと言われ、暫く話した。


また、お茶でも使用ねと言って電話を切った。



それから時々、メッセンジャーで繋がれたときだけ会話した。


家が忙しくてパートを辞めなくてはいけないとかいっていたと思う。

僕は、何となく大変だなと思っていた位だった。




でも、このときからのフミちゃんの家は凄く大変な事になっていた。



義理のおばあちゃんが亡くなり、介護していた義母さんが亡くなり、家事を一手に担いながら育児とパート。

暫くして同居の義父さんが脳梗塞で倒れ、寝たきりになったのだった。


僕が彼女の近所に出張で赴く事になりメールした事があった。

「今、⚪⚪にいるんだけど、お茶でもしない?」


今ならわかる。こんな状況で今から出てきてって言われて、電車で一駅のところだって行けないって。

浅はかな僕。


その時も「ごめんなさい。都合が悪くて…」


と、辛いだろう自分の状況は話さなかった。





それでも追い討ちをかけるように彼女を不幸が襲う。










フミちゃんの旦那さんが、ガンになった。

会っていないと

その後、入社一年目の僕は仕事に忙殺されていった。


2年目に香川県に転勤になった。


その前にまた、みんなで集まった。

転勤のことは黙って。



ふみちゃんは産後半年位たっていて、久々だから羽伸ばしておいでって言われてると2次会まで参加した。


幸せそうだった。


といっても、そもそも最初の店には殆ど参加をしてなかった。


カラオケして終電まで一緒にいた。


送るというのに大丈夫と言い切る彼女を無理やり改札までおくる。皆に送りオオカミになるなよと、言われながら。


ならねーよ。

幸せそうな彼女を、そんな目にあわせてどうするの?

僕だって嫁さんいるし。


改札で、握手して別れた。




その後、僕は香川県に引っ越した。


収入はそこそこあったし、物価が安くて賃貸の広い家を借り、仕事に邁進していた。


会えないとなると、ふみちゃんのことも薄れていっていた。



3年目、上司がかわってから僕の環境は一変した。


改革が嫌い、上司に取り入るのがうまい、

僕のような歯向かってくる(といっても、相手が間違えてるからだが)部下を潰そうとする。



最初は歯向かったりすかしたり、なんとかやっていたけど、しんどくなってきた。


病院で軽い鬱だと言われた。


嫁さんは一般的にはいい人なんだが、今も作家をしていて、ちょっと変わってる人。


この状況を話したところ、

「それは井原が悪いんだよ。気の持ちようでしょ」(嫁さんは未だに僕の名字を呼び捨てにする。)


「私は働くの嫌なの。しっかりお給料稼いできて」


この頃から、僕らは完全なるレス状態だった。


つきあって数回したこともあったけど、結婚後したかどうかも覚えてない。

健全なる20代男子だけど、僕にとってはそんなに重要ではなかった。

そりゃぁしたくないかと言われれば、したい。

只、できないから別れるとかそういう選択はなかった。


でも、香川県に引っ越すときベッドを分けたいといわれ、こう言われた。



「そういうこと(セックス)、もうしたくないから。外でしてきていいよ」




ショックだった。



心も離れてるように感じた。



子供は…貧乏学生どうしだから暫く作らないでおこうとは話し合っていた。


しないってことは、子供要らないって事だよね。


でも、そういうこと、一方的に言うものなのか?


妻と夫の立場が逆なら、妻はかわいそうと慰めてもらえるんだろうか。




そんなときhotmailのメッセンジャー機能で懐かしい名前の登録があった。


"かわっち"







ふみちゃんだった。


アイコンにかわいい赤ちゃん。





ダメモトでメッセージを送ってみる。



「久しぶり!元気にしてる?」



暫くして返信が来た。


『お久しぶりです。元気にやってますよ』


彼女の声が聞きたくなった。



「電話出来るときとか、ある?」