初対面
その日も変わらずに過ぎていこうとしていた。
そんなとき、カウンターに向かってペコッと頭を下げつつやって来たお客さんとマネージャーが、親しげに話し出した。若くてぽっちゃりしてて黒くて長い髪が印象的、決して美人ではないけど優しい雰囲気のふんわりかわいらしい感じ。
僕は人を見た目で判断する方ではないと思っていたけど、良い意味で何かが引っ掛かった。
その人は、カウンターにいたもう1人の社員(矢野さん)さんと話している。手にはCD。常連客にしては僕が顔を知らない…。そうこうする間に、その人は僕の方をみて何か言いたげ(だったように見えた)だったけど、ちょっと顔をひきつらせて(ように見えた)ペコッとお辞儀をして、帰っていった。
僕は矢野さんに聞いてみた。
「常連の方ですか?僕、はじめてな気がするんですけど」
『あー、今の、田中さんよ。明日から復帰する』
「えー?紹介してくださいよ!田中さんも挨拶くらいしてくれたらいいのに」
『井原は接客中だったからじゃん?まあ、明日会えるしねー。それに、怖がってたよ(笑)』
「は?」
俺は身長が190㎝、黒ぶち眼鏡でちょっと強面。走ってきてぶつかった子供に「大丈夫かぁ?」と極上スマイルを向けたら泣かれるってこともあったくらいだ。
田中さんは矢野さんよりちょっと低く見えたから女子の平均?位か。
それにしても失礼だな。
それがふみちゃんの第一印象だった。