閑話⑨
ふみちゃんとの逢瀬で、食事するのも楽しみだ。
嫌いなものが無いから、カジュアルなところからフォーマルなところまで気分で選ぶことができる。
今時、ドレスコードも厳しくないところも多いので、服装もそんなに気にしなくていい。
おしゃれにしてても、「焼き鳥食べたい!」と彼女が言ってくるときもある。
(僕はいつもスーツ)
支払いは、もちろん僕。
でも、はじめの何回かはお財布を出して待っててくれていた。
出させないんだけど。
ホテルに帰ってから、必ず言われる。
「食事代、出させてくれない?」
正直、あまり食べない飲まない彼女のぶんの代金は
全く負担ではない。
会社で後輩に奢るのとも全然頻度が違うし。
「気にしないで。いつもごちそうさまっていってくれる、それだけで嬉しいよ」
『ひろくんの稼いだお金、私のために遣わせたくない』
少なからず、お金が自分の為に遣われるのが嫌だと言う。
今までバレンタインデーと誕生日を通過したわけだが
都度、僕の好きな結構お値段のはるお酒をプレゼントしてくれる。
僕が、自分でお酒をコレクションしているから持ち帰られるという気遣いだった。
僕も、高いのがわかるからいいのにって思うけど
ありがとうって言われた方が嬉しいよね。
「嬉しいなぁ。大事な日に飲もうかな」
『いつも、ご馳走してもらってばっかりだから。勿論、それだけじゃないよ。お酒わからないから、店員さんに聞いて選ぶの手伝ってもらったり。楽しいね』
選んでる姿を想像すると可愛らしい。
お金は、凄く大切だと思うし彼女が困ってたら助けて揚げたい。
いつでもそういう準備はあるけど
受け取ってもらえないだろう。
「いつでも、頼ってね」
伝えてみる。
『一応、フルタイムで働いてますから(笑)』
いつものクシャッとしたのではなくて
にっこり微笑む彼女の、それはプライドだと思った。